2011年1月3日月曜日

繁栄 を読んで

マットリドレーは、「赤の女王」からお気に入りのサイエンスライターであり、かつ歴史を駆動するものは何かというテーマは非常に興味深いので迷わず購入。


・繁栄の原点には「(血縁関係以外との)交換(≠互恵行為)」と「一定規模以上の集団での専門化」がある。

 -繁栄の原点には、アフリカの気まぐれな気候のせいで、嫌でも適応性の価値がまし、その適応性によって新しい能力が発達するような淘汰が促されたという説があるが、「気候はずっと前から気まぐれだったのに、テクノロジーに精通した類人猿は生まれなかった」「なぜ、ゾウやハイエナは変わらないのか」ということを論破できない。

 -また、繁栄の原点には、遺伝子の突然変異により「想像や計画などの高次の機能を初めて使いこなせるようになった」という説があるが、「なぜ、複雑な言語を持っていたネアンデルタール人の道具には文化的な変化が見られないのか」を説明できない。


 -機構、遺伝子などではなく、繁栄とは、血縁者でもない相手と初めて物を交換しだしたというある種の集団的知性が生まれたことに起因する
  ・チンパンジーは、真の物々交換(自分にとって価値のあるものを差し出し、それより少し価値の高いものを受け取る行為)は行わない
    -ブドウ・リンゴ・きゅうり、にんじんの順で好むチンパンジーは、にんじんの代わりにブドウを受け取ることはしても、りんごの代わりにブドウを受け取ることはしない


・交換の元となる「他人を信頼する本能(オキシトン)」をいつどのように覚えたのかは明らかではない。
 -人間が試験的に交易を始めて、比較優位と集団的頭脳の恩恵にあずかり、その結果、信頼と共感が特別よくできる人間の心の突然変異型を優遇する自然淘汰が促された?
 -ただし、人間だから発達したという証拠はない

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